近所のカフェで、いつも2人でお茶をしにくる74歳のご夫妻に、仲良しの秘訣を聞きました。
割と急に、脈絡もなく聞いたのですが「かざらないことね」と、即答の奥様。
穏やかで、満ちていて、凛として。フワッと鳥肌がたちました。
小学校3年生からご一緒で、同い年だそうです。
「漬け物がありゃぁいい」というおじいちゃんの言葉を
「漬け物だけは切らしちゃだめ、って意味なのよ」と奥様。
「もーお前にゃ飽きたわ、なんていうからね、日用品を鞄に入れて用意してあげて、いつでも出て行きないね、と言うの」
おじいちゃんは、もちろんどこにも行きません。
奥様は百も承知だからこそ「鞄に日用品を入れる」という過程までも
お二人の愛ある冗談になっています。

ご夫妻のように
1の言葉で10を知る。
言葉の裏側の、本当の意味を知る。
こうして、言葉の「余白」に意味を見出せるのは、日本人独特の感性だそうです。
例えば、海外の方とのメールでは、段落がほとんど ない事に気が付きます。
所変われば 何の意味も持たない
私たちに分節の意味を落とし込ませてくれるあの「余白」・・
日本語って、言い過ぎない方が
また、ただ事実だけを簡潔に述べるほうが
時としてより深く伝わる事もあり
そんな所が、とても特殊で、とても奥深いと感じます。
四季があるからこそ、天候を表す言葉も豊かな日本語。
五月雨、花冷え、花曇り、時雨。
同じ雨でも、季節によって表現が変わるって、考えてみたらすごい事ですよね。
もし海外の方に「五月雨」を説明しようとしたら
Well, It’s rain in Japanese rainy season which is normally not chilly.It’s quiet and would make you feel peace and calm. and we call it Samidare.(日本の梅雨の雨のこと。寒くなくて、静かで、穏やかな気持ちにさせてくれる)
といった具合でしょうか。
その情景までも「五月雨」というたった一言で
喚起できる日本人の想像力。
泣けるほど美しいと思います。

自然を「ことば」として聴く感性を持っている私達。
雨の音が、雑音、ないに等しいもの
などではなく、たとえば、静かな、優しい、怒りに満ちた、悲しげな
という具合に、情景の意味合いを、丸ごと変えるほど
意志のある何かとして受け取る事もできます。
会話の中で、時として口を紡ぐ。
そうやって「空白」をも分かち合うとき
会話が深みを増します。
テクノロジーは距離を越えて
スマートフォン一つで、世界中誰とでも
簡単にコミュニケーションを取れる時代。
現代を生きる私たちは その素晴らしさを享受しながら
会わなくても意思疎通ができる事で
ことばに紐づく、表情や温度感を読み取る力
私たちの「1のことばで10を知る」力は
弱くなっていくとも言われています。
美しい日本語で語り合うご夫妻の笑顔に
失ってはいけないものがあると感じました。
「かざらない」自分のまま、相手をただ感じ取る。
温かいですね。

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